偕楽園(水戸市)
「日本三名園」の一つに数えられる偕楽園
偕楽園は茨城県水戸市にある日本庭園で、金沢の兼六園や岡山の後楽園とともに、「日本三名園」の一つに数えられています。園内には約100品種、3000本前後の梅が植栽されており、全国でも有数の梅の名所となっています。例年2月中旬から3月下旬にかけては、紅白の梅が園内を早春の季節の彩りで染め上げます。梅の花の見頃時期には「水戸の梅まつり」が開催されています。
偕楽園は江戸時代、水戸藩第9代藩主の徳川斉昭によって、1842年7月1日に開園されました。1833年に藩内を一巡した徳川斉昭は、水戸の千波湖の北西にせりあがる七面山を切り開き、回遊式の庭園を造る構想を抱いたのです。偕楽園の名前には「衆と偕(とも)に楽しむ場」としたいという徳川斉昭の願いがこめられています。千波湖を見下ろす園内中央の見晴広場の一画には、徳川斉昭が偕楽園の創設の趣旨と経過を記した記碑が残されています。
梅が群生する東西梅林
約13ヘクタールの偕楽園の敷地内でも、最も梅が群生しているのは東門から園内に入って正面の東西梅林です。門からは見渡す限りの梅林が広がっています。
梅林の中には梅を縫うように歩きやすい園路が張り巡らされています。園路を散策すると、360度のパノラマで梅の花が繋がり、正真正銘の花園です。
園路沿いには、数多くのベンチが設置されているので、腰をかけてゆっくりと梅の花を観賞することができます。
東西梅林の南に接する見晴広場からは、南の千波湖に向かって紅白の梅が帯をなしています。
園の西の端に設けられた西門近くの蓮池も梅の花で縁取られます。おだやかな水面に映りこむ梅の色には、和の情緒が感じられることでしょう。
約100品種の梅の中から選定される「水戸の六名木」
偕楽園では梅の品種の調査・研究が行われています。園内に育つ約100品種の中から花の形、香り、色などが特に優れているものを6種選び、1934年に「水戸の六名木」として指定しました。「烈公梅(れっこうばい)」、「白難波(しろなにわ)」、「月影(つきかげ)」、「江南所無(こうなんしょむ)」、「柳川枝垂(やながわしだれ)」、「虎の尾(とらのお)」の6種です。六名木は各々六角形の柵で囲われていますから、容易に探し当てることができます。
「白難波」は、野梅系、難波性の品種で、花は白色の八重咲きです。江戸時代から北陸地方で、花梅ではなく実梅として盛んに栽培され、梅干しに加工されていました。
「月影」の花は、清白花の中輪一重咲きです。枝や萼(がく)は緑色で、強めの芳香を放ちます。盆栽、鉢植えとして栽培されることも多い花梅です。
「柳川枝垂」は、淡い紅色の一重咲きの中輪の花を咲かせます。原産は中国ですが、古代には日本に渡来していたと推定されています。
「虎の尾」は白色または淡紅色の花を咲かせます。枝が細くトゲ状の小枝となることが多く、香りが高いのも特徴です。蘂(しべ)の曲がり方や旗弁(はたべん)が虎の尾に似ているため、「虎の尾」と名づけられたようです。
全体を鳥瞰することができる好文亭
偕楽園では「水戸の六名木」をはじめ、約100品種、3000本前後の梅が育っていますが、見晴広場の西に接する好文亭からは、梅林の全体を鳥瞰することができます。好文亭の名称は、梅の異名である「好文木」に由来しています。斉昭公が自ら建設位置を定め、内部や外部の意匠にいたるまで、設計を行ったと伝わります。
2層3階の建物の中には武士の風格を漂わせる中に、素朴で清雅な趣がにじんでいます。亭内では詩歌の会などが行われ、文人墨客、家臣、領地の人々が数多く集まりました。梅の間の他に、桃の間、つつじの間、萩の間、紅葉の間などの部屋が設けられ、各々の部屋は襖絵で装飾されています。
「水戸の梅まつり」の期間中には、東門周辺を中心に数多くの露店が軒を連ねます。見晴広場や周辺では、黄門さま御一行・水戸の梅大使・みとちゃんによるお出迎え、野点茶会、おもてなし花火、ひな流し、全国梅酒まつり、大撮影会と写真コンテスト、水戸納豆早食い世界大会、水戸の梅大使によるおもてなし、きものde梅まつり、黄門さま御一行との無料写真撮影、水戸浪漫人力車の運行、ベロタクシーの運行など盛りだくさんのイベントが企画されています。
徳川斉昭ゆかりの水戸の土産品
偕楽園の東門の周辺には土産物店が密集しています。各店舗には、水戸の梅、のし梅、梅羊かん、偕楽梅干、水戸梅小町などの梅加工食品の他、水戸納豆の関連商品、水戸黄門の関連グッズなど、多種多様の土産品が並んでいます。
水戸の梅には、徳川斉昭が考案した梅の実の保存方法が応用されています。梅干しをシソ巻きにして、星の梅という菓子が作られました。その後、製法に改良が加えられ、あんを求肥(ぎゅうひ)にくるみ、梅酢に漬け込んだシソの葉で包み、梅の実をかたどっています。
のし梅は、徳川斉昭が考え出した乾酸錠(かんさんじょう)が起源とも言われています。梅の実を砂糖や寒天と一緒に煮込み、竹の皮で包んだゼリー風の和菓子です。さっぱりとした酸味とべっ甲色が特徴で、暑気除けとして食べられてきたようです。
<施設情報>
施設名 偕楽園(かいらくえん)
住所 茨城県水戸市見川1-1251
電話番号 029-244-5454
開園時間 2月中旬から9月30日=6:00から19:00/10月1日から2月中旬=7:00から18:00
入園料 大人=300円/小人=150円
アクセス JR常磐線「水戸駅」よりバスで約20分
<施設情報>
施設名 好文亭(こうぶんてい)
住所 茨城県水戸市常磐町1-3-3偕楽園本園内
電話番号 029-221-6570(好文亭料金所)
開館時間 2月中旬から9月30日=9:00から17:00/10月1日から2月中旬=9:00から16:30
閉館日 12月29日から31日
入館料 大人=200円/小人=100円/満70歳以上=100円
アクセス 偕楽園内