江戸時代末期に「ソメイヨシノ」が誕生した豊島区駒込
「染井吉野櫻發祥之里」の記念碑が設けられる「染井吉野桜記念公園」
桜には品種改良によって数え切れない種類があるのですが、全国的に最も多く育てられているのは「ソメイヨシノ」でしょう。この「ソメイヨシノ」が誕生したのは、現在の東京都豊島区の駒込だと伝わっています。JR山手線、東京メトロ南北線「駒込駅」の周辺では、数多くのソメイヨシノが植栽され、例年3月下旬から4月上旬にかけて駒込の町を隅々まで薄紅色で彩ります。見頃の時期にあわせて「染井よしの桜まつり」が開催されています。
現在の駒込の周辺は、江戸時代には「染井」と呼ばれていました。ここには各地から数多くの植木職人が集まり、植木屋が軒を連ね各々の技を競ったようです。桜の品種改良も行われ、江戸時代の末期には新種を産み出しました。オオシマザクラとエドヒガンを交配した品種が評判を呼んだのです。誕生の直後から明治時代の初期にかけては、「吉野桜」の名で全国各地に販売していたのですが、奈良の吉野山の「山桜」と区別することが望まれました。そこで新しい品種の誕生地である「染井」をとりこんで、「ソメイヨシノ」という名称で呼ばれるようになったのです。1997年12月にはJR山手線、東京メトロ南北線「駒込駅」の北に、「染井吉野桜記念公園」が整備されました。
「染井吉野桜記念公園」には「ソメイヨシノ」の誕生地であることを印象づけるため、「染井吉野櫻發祥之里」の記念碑が設けられています。「ソメイヨシノ」の解説パネルには、植木屋の第一人者、染井の伊藤伊兵衛の庭で大勢の人が花を愛でている様子が描かれた「染井之植木屋(絵本江戸桜)」の絵が紹介されています。
<施設情報>
施設名 染井吉野桜記念公園(そめいよしのさくらきねんこうえん)
住所 東京都豊島区駒込2-2-1
電話番号 03-3981-1111(豊島区都市整備部 公園緑地課 公園管理グループ)
アクセス JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」北
地域住民のアイデアで整備された「染井よしの桜の里公園」
「染井よしの桜の里公園」は、「染井吉野桜記念公園」から北西に数百メートルの駒込6丁目に、2009年4月にオープンしました。銀行の跡地の利用を、地域住民がアイデアを出して計画した公園です。敷地を「ソメイヨシノ」が取り囲む中に、「染井」での桜の新種の誕生を紹介するパネルが設置されています。
<施設情報>
施設名 染井よしの桜の里公園(そめいよしのさくらのさとこうえん)
住所 東京都豊島区駒込6-3-1
電話番号 03-3981-1111(豊島区都市整備部 公園緑地課 公園管理グループ)
アクセス JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」より徒歩約8分
伊藤伊兵衛がご神体を奉納した染井稲荷神社
公園の北東に接する染井稲荷神社の社殿は、すっぽりと「ソメイヨシノ」で覆われます。ご神体の十一面観音石像は、伊藤伊兵衛が1674年2月に奉納したと伝わっています。
<施設情報>
施設名 染井稲荷神社(そめいいなりじんじゃ)
住所 東京都豊島区駒込6-11-5
電話番号 03-3918-1073
アクセス JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」より徒歩約8分
かつての伊藤家住宅に隣接する染井霊園
染井霊園は「染井よしの桜の里公園」から西数百メートルに位置する霊園で、旧称の染井墓地と呼ばれることもあります。江戸時代から水戸徳川家の墓所とされ、水戸藩第9代藩主の徳川斉昭(とくがわなりあき)の生母、第11代で最後の藩主となった徳川昭武(とくがわあきたけ)の生母などが、ここで眠っています。約7万平方メートルの園内には5000あまりの墓が設置されています。明治時代以降に作家や学者として活躍した二葉亭四迷(ふたばていしめい)、岡倉天心(おかくらてんしん)、高村光太郎(たかむらこうたろう)などの墓も、ここに設けられています。
「ソメイヨシノ」の誕生に力を注いだ伊藤家は、染井霊園の北東に住んでいたと伝わります。園内には100本前後の「ソメイヨシノ」が育っており、早春時期には亡き人の霊を慰めているかのようです。
<施設情報>
施設名 染井霊園(そめいれいえん)
住所 東京都豊島区駒込5-5-1
アクセス JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」より徒歩約10分
豊島区で最古の神社、妙義神社
妙義神社は「染井よしの桜の里公園」から東に約300メートルの位置に社殿を構える神社です。社伝によれば日本武尊(やまとたけるのみこと)を祀って、651年に創建されたと伝わります。豊島区では最も古い神社です。室町時代の後期には太田道灌(おおたどうかん)が幾度となく合戦前に、戦勝祈願に訪れたと言われています。拝殿の扁額(へんがく)には「勝軍宮(かちいくさのみや)」と記されており、勝負運を引き寄せるパワースポットとして崇敬を集めていました。神社の境内は、「ソメイヨシノ」で取り囲まれ、勝運を呼びこんでいるかのようです。
<施設情報>
施設名 妙義神社(みょうぎじんじゃ)
住所 東京都豊島区駒込3-16-16
アクセス JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」より徒歩約4分
駒込小学校の校庭で育つシンボルの「駒桜」が豊島区の開花標準木
駒込のエリアの公園、神社などは、どこも早春には「ソメイヨシノ」が薄紅色で彩られますが、学校にも桜の木が欠かせないようです。駒込小学校の校庭でシンボルとなっている「ソメイヨシノ」は「駒桜」の愛称で呼ばれ、区の開花標準木となっています。駒込の地域の人々に春の訪れを知らせるのは、小学生なのかもしれません。校舎は四方から「ソメイヨシノ」で彩られ、新入生を迎えているようです。お花見スポットとしては適切ではないかもしれませんが、校庭を囲む側道はお花見散策にもってこいです。
<施設情報>
施設名 駒込小学校(こまごめしょうがっこう)
住所 東京都豊島区駒込3-13-1
アクセス JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」より徒歩約7分
豊島区の駒込では桜を見かけない場所は、どこにもないでしょう。「ソメイヨシノ」の誕生地として、地域で桜の文化を大切に守り続けているようです。「染井よしの桜まつり」の開催期間中には、町中に提灯が吊り下げられ夜間のライトアップが行われます。江戸時代から続く季節の風物詩をたっぷりと味わうことができます。