常盤木門や銅門が早春の化粧をまとう小田原城址公園
![]()
小田原城は、戦国時代には北条氏の本拠地として難攻不落を誇る城でした。本丸の跡地を中心とするエリアが小田原城址公園として整備されています。園内の各所には約250本の梅が植栽され、例年2月中旬から3月上旬には園内を季節の彩りで包みこみます。見頃時期に合わせて「小田原城梅まつり」が開催されています。
小田原城址公園の中で梅の木の密度が高いのは、常盤木門(ときわぎもん)を囲むエリアです。常盤木門は本丸の正門の役割をにない、城の重要な防御拠点として堅固に造られていました。常盤木は常緑樹の意味をもち、門のかたわらに植えられた松が緑色をたたえて何十年も生長し、小田原城が永久不変に繁栄することを願い、常盤木門と名づけられたと言われています。門の東に掘られた本丸東堀には鮮やかな朱色の橋が架けられ、早春には梅の花で覆われます。
常盤木門の東には銅門(あかがねもん)が建造されています。銅門は、渡櫓門(わたりやぐらもん)、内仕切門(うちじきりもん)と土塀によって囲まれる枡形門(ますがたもん)の構造をもっています。1997年に復元された門の中が特別公開されることがあります。渡櫓門には銅門の名の由来となった銅板の装飾が施されています。銅門と常盤木門を繋ぐのは梅の並木です。
銅門は、藩主の居館である二の丸の正門の役割を果たしていました。二の丸の跡地には建造物は全く残っておらず広場となっていますが、梅の木が整列し輪郭を際立たせてくれます。
南曲輪の中に設けられた小田原市郷土文化館の正面玄関は紅梅の化粧をまといます。館内では小田原市に関する歴史資料、文化人資料、考古資料、民俗資料、自然科学資料などが展示されています。
![]()
戦国時代に小田原城を居城とした北条氏は、梅の実を兵糧用として利用していました。このため小田原市内では梅の栽培が盛んに行われるようになりました。本丸広場に出店する本丸茶屋の看板メニューの小田原丼では、茶飯にぎりと杉田梅の梅干しが、利尻昆布と鰹節をブレンドしただし汁に浮かびます。
「小田原城梅まつり」の期間中には、流鏑馬(やぶさめ)や郷土芸能の小田原ちょうちん踊り、寿獅子舞、書の舞などの様々なイベントが行われるばかりでなく、手裏剣打ち道場や甲冑着付け体験などのコーナーが設けられます。
<施設情報>
施設名 小田原城址公園(おだわらじょうしこうえん)
住所 神奈川県小田原市城内
電話番号 0465-23-1373
アクセス JR東海道本線「小田原駅」より徒歩約10分
公式ホームページhttps://odawaracastle.com/
約200品種の梅で彩られる小田原フラワーガーデンの渓流の梅園
![]()
小田原フラワーガーデンは1995年4月に、四季を通して花が楽しめる植物公園として、小田原市久野に整備された植物公園です。園内には「渓流の梅園」が設けられ、例年1月下旬から3月中旬には梅の香りで包まれます。梅の開花時期に合わせて「渓流の梅園梅まつり」が開催されています。
小田原フラワーガーデンは約4.2ヘクタールの敷地に広がっていますが、その約半分の面積をしめるのが、「渓流の梅園」です。園内には約200品種500本前後の梅が植栽されています。
梅園は築山式園地となっており、中央には静かな水面をたたえるハナショウブ池が設けられています。初夏にはハナショウブが咲き乱れる池の周囲を早春に彩るのは梅の花です。青空を背景とする梅の花も見事ですが、水面に移りこんで揺れる梅の花も変化があって魅力的でしょう。
せせらぎに沿って設けられたウッドデッキを歩けば、早春の風を感じながら梅の花を観賞することができ、季節感たっぷりです。
園内には休憩用のベンチが数多く設置されているので、お気に入りの近くに腰をかけて、ゆっくりと梅の花を眺めることができます。
芝生が敷きつめる広場もあちこちにあるので、レジャーシートを敷いてランチを楽しむこともできます。
梅の銘木や絶景ポイントにはカメラ撮影用のスタンドが設置されているので、インスタ映え写真の撮影のヒントになることでしょう。
![]()
「渓流の梅園」の最大の特徴は梅の品種のバラエティーです。約200種の梅は1月から3月までの3ケ月の長期にわたって順番に花を開いていきます。紅梅系には「紅鶴(べにつる)」をはじめとして、「見驚(けんきょう)」、「古金襴(こきんらん)」、「紅冬至(べにとうじ)」、「鹿児島紅梅(かごしまこうばい)」、「藤牡丹枝垂(ふじぼたんしだれ)」、「道知辺(みちしるべ)」、「八重寒紅(やえかんこう)」、「緋の司(ひのつかさ)」、「浮牡丹(うきぼたん)」、「蓮久(れんきゅう)」など、種類豊富です。
![]()
白梅系では、「一重緑萼(ひとえりょくがく)をはじめとして」、「月影(つきかげ)」、「織姫(おりひめ)」、「大輪緑萼(たいりんりょくがく)」、「淡路(あわじ)」、「淡路枝垂(あわじしだれ)」、「島原(しまばら)」、「白加賀(しらかが)」、「八重野梅(やえやばい)」など、種類は数限りありません。
「渓流の梅園梅まつり」の期間中には、梅園ガイドツアーをはじめ、猿回しなどの演芸、尺八の演奏、梅をテーマとした体験プログラムが数多く企画されます。
<施設情報>
施設名 小田原フラワーガーデン(おだわらふらわーがーでん)
住所 神奈川県小田原市久野3798-5
電話番号 0465-34-2814
入園料 無料
開園時間 9:00から17:00
休園日 月曜日(祝日、休日の場合は翌日)/年末年始
アクセス 伊豆箱根鉄道大雄山線「飯田岡駅」より徒歩約20分
残雪をいただく富士山を背景とする曽我別所梅林
![]()
曽我別所梅林は、小田原市北東部に食用の梅の産地として広がる梅林です。JR御殿場線下曽我駅を中心に、別所、原、中川原のエリアに広がる3つの梅林を総称して、曽我梅林と呼ばれることもあります。「十郎(じゅうろう)」・「杉田(すぎた)」「白加賀(しらかが)」など、3つのエリアを合わせると35,000本前後の梅が栽培されています。茨城県水戸市の偕楽園、埼玉県越生町の越生梅林とともに「関東三大梅林」に数えられることもあります。いずれの梅林も例年2月上旬から3月上旬にかけて梅の香りで包まれます。梅の見頃時期に合わせて「曽我別所梅まつり」が開催されています。
曽我の里には、仇討ちで知られる曽我兄弟ゆかりの城前寺や宗我神社、兄弟の養父であった曽我祐信の墓、母の満江御前の墓などの史跡が残されています。梅林は戦国時代に、小田原北条氏が梅の実を兵糧用にするために植えたのがはじまりと伝わります。江戸時代には、小田原藩を治める大久保氏によって奨励されました。食用品に加工するために梅を栽培したのです。特に梅干しは、箱根越えをする旅人にとっての必需品となりました。曽我別所梅林の梅が満開となる時期には、中央に商店や露店が姿を現し、産地勅産品の梅食品が販売されます。
梅林に訪れた人々は碁盤の目のように巡らされた農道を歩きながら、見渡す限りの梅を眺めることになります。
![]()
見渡す限りの梅林には統一感があふれ壮観ですが、見逃したくないのは北西方向に見える山です。白梅越しに富士山を眺めることができます。早春の時期には山頂に雪が残り、梅の花の色と溶け合います。
<施設情報>
施設名 曽我別所梅林(そがべっしょばいりん)
住所 神奈川県小田原市曽我別所
電話番号 0465-42-1965(曽我別所梅まつり観光協会)
アクセス JR御殿場線「曽我駅」より徒歩約15分
樹齢100年を超える梅の老樹も元気に花を咲かせる辻村植物公園
![]()
辻村植物公園は、神奈川県小田原市の北西部の「いこいの森」の一画を整備した植物公園です。園内は一面、梅林が広がり、例年2月中旬から3月中旬にかけて、季節の彩りで染め上がります。梅の見頃時期に合わせて「辻村植物公園梅まつり」が開催されています。
辻村植物公園は、明治40年代に造園された辻村農園が前進です。西洋の草花をメインに扱う先進的な農園で、海外から樹木の種子を取りよせ、庭園や公園樹としての試作を行っていました。園内には希少な外国産の樹木の姿が残っていますが、最も多く栽培されているのは梅です。
約4.7ヘクタールの園内には「白加賀(しらかが)」を中心に約560本の梅が植栽されています。中には樹齢100年を超える老樹も、枝いっぱいに花を咲かせます。小田原市では古くから梅の栽培が盛んに行われ、梅を市の花としているのです。辻村植物公園は、「いこいの森」の中に位置するため、斜面に立体的に梅の花が折り重なりあいます。
梅林の中央には池が設けられ、おだやかな水面を梅の花が取り囲みます。
![]()
辻村植物公園を取り囲む「いこいの森」には、2010年に「わんぱくらんど」が開設されました。園内には子どもたちに大人気の大型遊具が数多く設置され、スリル満点の長さ約67メートルの吊り橋なども架けられています。広い敷地内にはロードトレインも走り、観梅に加えてアクティブな自然観察をすることができます。
<施設情報>
施設名 辻村植物公園(つじむらしょくぶつこうえん)
住所 神奈川県小田原市荻窪1579-8
電話番号 0465-24-3189
アクセス JR東海道本線「小田原駅」西口より箱根登山バス「いこいの森(わんぱくらんど)」行きに乗車し「辻村植物公園」停で下車すぐ
まとめ
神奈川県小田原市では戦国時代から梅の栽培が盛んに行われ、市の花に指定されています。市内に梅の名所が数多くありますが、その中から小田原城址公園、小田原フラワーガーデン、曽我別所梅林、辻村植物公園の4スポットをご紹介しました。いずれのスポットにも、ここならではの魅力があふれています。