「岩槻流しびな」(さいたま市)
「岩槻流しびな」は、さいたま市岩槻区の岩槻城址公園で行われます。開催日時は、例年3月3日直前の日曜日の10:00から14:00です。
さいたま市の岩槻区は、人形の町として広く知られています。岩槻で人形作りが始まったのは江戸時代からと伝わっています。江戸幕府第3代将軍の徳川家光が、日光東照宮の造営を行ったときに、日光御成街道に沿って全国から工匠が集まったのです。江戸からは最初の宿場町であった岩槻の周辺は、桐の栽培に適していたため人形作りが盛んに行われるようになりました。東武アーバンパークラインの岩槻駅東口の商店街には数多くの人形店が軒を連ねています。岩槻城址公園には、人形塚が設置されています。
岩槻城址公園は、岩槻駅から東に約1.5キロのところに位置します。室町時代の末期、戦国時代の初頭に築城されたと伝わる岩槻城の跡地が整備されました。かつての城の土塁に囲まれる公園の中央には菖蒲池がおだやかな水面をたたえ、鮮やかな朱塗りの八ツ橋が架けられています。
菖蒲池に浮かべる「さん俵」
「岩槻流しびな」の開催日には、菖蒲池沿いに特設のテントが設置されます。池に浮かべる「さん俵(さんだわら)」を販売しているのです。「さん俵」は、わらで編んだ直径12センチ前後の丸い台盤の上に、和紙を使って作られたひな人形が乗せられています。これを水に流して、子どもの無病息災を祈るのです。
当日は10:00に菖蒲池に張り出すように設置されたステージに、久伊豆神社から宮司が現れ、祝詞(のりと)の奏上(奏上)と、榊(さかき)を振ってお祓いが行われます。続いて開会が宣言されると、「岩槻流しびな」が始まるのです。
流しびなが始まると、「さん俵」を手にした人々がステージに向かって行列をつくります。
そして、赤い絨毯の上から池に向かって手を差し出し、「さん俵」を静かに水面に浮かべていくのです。
水に浮かんだた「さん俵」は列を作り、ゆっくりと池の中央に運ばれていきます。流しびなは、ひな祭りのルーツとなったと言われています。ひな人形を水に流すことによって、自らの身を清めます。絶え間なく流れる川には、昔から浄化や供養の力があると信じられていたのです。
「岩槻流しびな」の開催日には、公園内では琴の演奏、鼓笛隊の演奏、十二単衣着付けの実演などの和の情緒が感じられるイベントが行われます。甘酒の無料配布、各種の模擬店、岩槻の特産品の販売コーナーも設置され、大勢の人々で賑わいます。
<施設情報>
施設名 岩槻城址公園(いわつきじょうしこうえん)
住所 埼玉県さいたま市岩槻区太田3-4
電話番号 048-757-9122(岩槻城址公園管理事務所)
アクセス 東武アーバンパークライン「岩槻駅」東口より徒歩約23分
岩槻区内で開催される「まちかど雛めぐり」
「岩槻流しびな」の開催日を含み「桃の節句」の前後の約2週間、岩槻区では「まちかど雛めぐり」も同時開催されます。岩槻駅周辺の商店街ばかりでなく市内には人形店が点在しており、各店舗では趣向を凝らした展示を行っています。
伝統工芸品を通して日本の文化に触れる岩槻人形博物館
桃の節句の前後には岩槻のまちかどに、ひな祭りのムードで包まれますが、一年を通して人形の姿を見ることができるのが岩槻人形博物館です。岩槻駅と岩槻城址公園のほぼ中間点に2020年2月にオープンしました。
岩槻人形博物館に入ると、岩槻をはじめとする埼玉県が日本最大の人形の生産地であることに気づかされます。1階の展示室では、人形の伝統的な製法を中心として、製作道具や材料、近隣で作られた人形や文献などの資料が展示されています。現代の職人の人形作りの様子を映像で見ることもできます。伝統工芸品を通して日本の文化に触れる、またとない機会となることでしょう。
<施設情報>
施設名 岩槻人形博物館(いわつきにんぎょうはくぶつかん)
住所 埼玉県さいたま市岩槻区本町6-1-1
電話番号 048-749-0222
開館時間 9:00から17:00(入館は16:30まで)
休館日 月曜日(休日の場合は開館)/年末年始(12月28日から1月4日まで)
観覧料 一般=300円/高校生・大学生・65歳以上=150円/小中学生=100円(
アクセス 東武アーバンパークライン「岩槻駅」東口より徒歩約10分
公式ホームページ https://ningyo-muse.jp/