半蔵門から田安門の間に掘られた内濠の千鳥ヶ淵
首都東京の中心にある皇居は江戸時代には、徳川将軍家が幕府を置く江戸城でした。国家の中枢機関ですから、徹底した防御施設を完備しなければなりません。幾つもの建造物を取り囲むように、何重にも濠が張り巡らされていたのです。都心には今でも円周を描くように長い濠が残され、江戸時代の面影を偲ぶことができます。江戸城の西端の半蔵門から、北端の田安門の間に掘られた内濠は、千鳥ヶ淵と呼ばれています。濠に沿って桜が植栽され、例年3月下旬から4月上旬にかけて早春の彩りで包まれます。都内でも屈指のお花見の名所で、毎年大勢の人々で賑わいます。
江戸城の重要な水源となった千鳥ヶ淵
千鳥ヶ淵は局沢川(つぼねさわがわ)と呼ばれていた川を2つの土橋で、せき止めることによって作られました。完成後は江戸城の防御ばかりでなく、重要な水源としての役割も果たしました。徳川家康が江戸幕府を開いた頃の江戸は、海に面した低湿地で井戸水に大量の塩分が、含まれていました。井戸水が飲料水としては使えないので、飲料水を確保するために近くの河川がせき止められたのです。千鳥ヶ淵の濠は、本丸と西の丸の間を通り、現在は日比谷公園が整備されている日比谷入江に流れ込んでいたと伝わります。
全長約700メートルの桜の花のトンネル
千鳥ヶ淵の名前の由来は、冬に都鳥などが多く集まるということや、V字型の濠が千鳥に似ていることなどが、考えられているようです。1881年に英国大使館の前に桜が植えられて以来、濠に沿って次々に数が増やされていきました。今ではソメイヨシノやオオシマザクラなど260本前後の桜が並木を築いています。早春には薄紅色の花で覆われ、全長約700メートルの千鳥ヶ淵の緑道は、桜の花のトンネルに変身します。
ボートで漕ぎ出し水面から眺める桜の花
千鳥ヶ淵の緑道を徒歩で散策する他にも、魅力的なお花見の方法があります。濠にボートで漕ぎ出し水面から、せり上がる桜の花を見ることができるのです。ボートの乗場は、千鳥ケ淵戦没者墓苑の北東です。種類もスワンボート、サイクルボート、手漕ぎボートが準備されています。お花見デートをするカップルもたくさん現れます。2人で桜の花の下の水面を滑れば、ロマンチックなムードに浸れることでしょう。ところが、お花見の時期はとても混雑します。待ち時間も計算に入れて、早めに乗場に行った方がよさそうです。
「千代田のさくらまつり」期間中に運行されるシャトルバス「さくら祭り号」
さらに、「千代田のさくらまつり」の開催期間中には、無料の丸の内シャトルバス「さくら祭り号」が特別運行します。コースの一部となっている首都高速都心環状線は、千鳥ヶ淵の濠を渡ります。左右の車窓には桜並木が広がる光景は壮観です。都心で憩いのオアシスを感じることができそうです。
<施設情報>
施設名 区営千鳥ヶ淵ボート場(くえいちどりがふちぼーとじょう)
住所 東京都千代田区三番町2先
電話番号 03-3234-1948
営業時間 10:00から17:00(受付時間は営業終了の30分前まで)
定休日 毎週月曜日(ただし祝祭日の場合は翌日以降の平日が休業日、観桜期は無休)/冬季休業(12月から2月)
料金 通常期=30分500円、60分1,000円/観桜期=30分800円、60分1,600円
アクセス 東京メトロの東西線・半蔵門線、都営地下鉄新宿線「九段下駅」2番出口より徒歩約10分/東京メトロ半蔵門線「半蔵門駅」5番出口より徒歩約10分