砥部焼の魅力満載 「未来へのかたち」
「未来へのかたち」は、2021年に公開された映画です。
愛媛県砥部町の伝統工芸で知られる砥部焼の窯元の親子が主人公で、オリンピックの聖火台を砥部焼で作ることによって、親子の絆を回復していくという物語です。
監督は、「瀬戸内海賊物語」「海すずめ」など愛媛を舞台とした映画を数多く手がけている大森研一監督です。
愛媛県の県庁所在地・松山市の南に砥部町があります。そこは山間の小さな町ですが、そこは「砥部焼」という陶器をつくるのが盛んです。陶器に関するイベントも定期的に行われ、訪れる人でにぎわいます。
南部は山地であるため、渓流などもあり、自然豊かな風景が数多くあります。
「りゅうせい窯」として登場 きよし窯
作中では主人公の竜青(伊藤淳史)が陶器を作る「りゅうせい窯」という名で登場したのがきよし窯です。
きよし窯で作られる陶器は、真っ白な磁器の地で、藍色の絵付けが鮮やかにおいて異彩を放っています。
この絵付けをしている山田ひろみさんは、国指定の女性伝統工芸士なのです。
この磁器の色合いを見たら、佐賀県の有田焼と似ているなと思っていましたが、実はこのきよし窯の窯元の山田公夫氏(ひろみさんの夫です)は佐賀県立有田工業高校窯業科の出身でした。
<スポット情報>
スポット名: きよし窯
住所: 愛媛県伊予郡 砥部町五本松364
電話番号: 089-962-2168
営業時間:9:00~17:00(土曜9:00~11:45)
定休日: 日曜・祝日・土曜日の午後
実際に作られたモニュメント 大南
砥部町の大南にある、砥部焼伝統産業会館の横に位置する場所に、映画の中でオリンピックの聖火台として実際に作られたものがモニュメントとして残されています。
高さ4mで、もちろん陶器でできています。カップのような陶器が数個積み重なった形のもので、炎が燃え上がっている状態を表しています。
物語の中心となるものですので、ファンの方は必見でしょう。
ちなみにそのミニチュアが、砥部町役場の1階ロビーにあるそうです。こちらも合わせて見てみると楽しいですね。
<スポット情報>
スポット名: 聖火台モニュメント
住所: 愛媛県伊予郡砥部町大南368
書道ガールズ‼わたしたちの甲子園
今では多くの方の知るところとなっている「パフォーマンス書道」。広げられた大きな紙(4m×6m)に、数人のメンバー(12人以内)が音楽に合わせて大きな筆を持ち、揮毫(きごう)していきます。時には手拍子を打ったり、ダンスを交えたりして、またチームによってはカラフルな色の墨汁を使用したり、絵を入れたりして、書の幅の広さも表現しようとします。
これを始めたのが愛媛県立三島高校の書道部でした。部員たちは町の商店街などでそれを披露し始めました。それがやがて地元のテレビ局の人が知るところとなります。
この四国中央市は紙の町として昔から栄え、製紙業が主な産業なのですが、町の勢いは決して盛んではありませんでした。けれども、テレビ局関係者が書道パフォーマンスを見た時、町が活気づくイベントになるに違いないと確信し、三島高校書道部の密着取材を行います。
そして全国放送した結果、大きな反響を生み出し、日本テレビが「書道ガールズ甲子園」を開催するようになり、その後愛媛県立三島高校書道部をモデルとして、『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』という映画を制作したのでした。
現在も毎年7月下旬から8月上旬にかけて、四国中央市で「全国高校書道パフォーマンス選手権大会」が開催されており、出場校も全国各地から集まり、毎回会場に入りきれないほどの観客であふれかえります。
映画のあらすじは、以下の通りです。
父を書道家にもつ里子(成海璃子)は、高校の書道部では部長だったのですが、書道への取り組み方で他の部員とぶつかり合ってばかりでした。そのような状況で、担当の教師が産休に入り、臨時の顧問として池澤(金子ノブアキ)が担当することになりました。けれども彼は教える気が全くなく、里子の書を酷評します。
ある日、池澤は音楽に合わせて字を書くパフォーマンスを披露したところ、里子は邪道だとして認めず、副部長の清美(高畑充希)は逆に気に入って部活で音楽を聞きながら練習します(曲はX JAPANの「紅」ではないとは思います)。清美の様子を面白く思わなかった里子は清美と揉め、清美を追い出すような言い方をついしてしまいます。清美はそれから公園で一人で書の練習をするようになりました。
そのような中、清美の家の文具店が閉店することになります。里子は清美と仲を戻り、文具店の閉店セールを盛り上げるために書道パフォーマンスをすることにしたのですが…。
困難な事に立ち向かっていく事の大切さ、仲間の存在の貴重さ、地方で進む町の衰退の問題など、どこにでもありそうな「諦めてしまいそうな事」に対する一つのヒントがこの作品にあるのではないでしょうか。
四国中央市の高台にある公園で、街の風景を一望できます。書道部部室での書道パフォーマンスが禁止されたので、清美は一人でこの公園で練習をしていたところへ里子と香奈が現れて、ここで、書道部が立ち上がっていくという、ストーリーのうえでキーとなる場所となったのがこの三島公園です。
<スポット情報>
スポット名: 三島公園
住所: 愛媛県四国中央市中曽根町⼄53−17
営業時間:終日
URL:
http://www.shikochu-kankou.jp/?page_id=229
寂しさを感じる小さな町の「メインストリート」 中通り商店街
地元の商店街を盛り上げようという「町おこし」の象徴として、この商店街が用いられました。清美の実家の文具店は、実際の「手芸サロン ユッカ」というお店が使われました。この店舗の前で彼女たちは四国中央高校書道部として初めての書道パフォーマンスが行われ、それがきっかけで「書道パフォーマンス甲子園」が開催されるようになります。
紙の街四国中央市が誇る資料館。紙の歴史や紙を作る工程などが詳しく伝えられ、あらゆる紙製品についての展示がされています。その中に、「書道パフォーマンス甲子園」の優勝校が書いた書が展示されています。
<スポット情報>
スポット名: 紙のまち資料館
住所: 愛媛県四国中央市三島宮川4丁目6番55号
電話番号: 0896-28-6257
営業時間:9:00~16:00
定休日: 月曜日
予算: 無料
URL:
https://www.city.shikokuchuo.ehime.jp/site/kaminomachi/
別れのシーンが印象的 JR予讃線・伊予寒川(いよさんがわ)駅
物語の中では、広島へ転校してしまう清美との別れや池澤の旅立ちが描かれた場所として用いられました。
<スポット情報>
スポット名: JR伊予寒川駅
住所: 愛媛県四国中央市寒川町3899-2
まとめ
愛媛県の作品は、舞台となる町の人々の現状や素顔をしっかりととらえたものが多く、リアリティーを感じさせるものが多いです。そこに生きる人の生活や生き方も浮き彫りにされる、いい作品も多いですね。実際にその映画の舞台に足を運んだら、登場人物が今にも現れそうな感じがしたり、その場所で登場人物が生きていたんだろうなと想像したりできるでしょう。実際に物語の舞台に足を運んでみて初めてその作品が理解できるのかもしれませんね。
チャンスがあれば、ぜひ愛媛県に足を運んで、物語の舞台にも触れていただければと思います。